昨今、睡眠の重要性について報じられることが多くなり、より質の高い睡眠が注目されるようになってきました。健康な生活を送るうえでも、十分な睡眠を確保した睡眠習慣を身につけることが大切です。慢性的な睡眠不足や質の悪い睡眠を続けることは、心身に悪影響を与えることにもつながります。そこで今回は、睡眠不足がもたらす心身の弊害についてご紹介したいと思います。 睡眠不足が脳に及ぼす影響 脳機能の低下睡眠不足の状態では、意欲、感情の制御、集中力、注意力、判断力に関わる脳の前頭葉がダメージを受け、脳活動が極端に低下することが報告されています。これにより、仕事や学習のパフォーマンスが低下し、やる気が起きにくくなります。 精神的な不調睡眠不足は、うつ病や認知症のリスクを高めるだけでなく、精神的な余裕を失わせ、人間関係の悪化やレジリエンス(精神的回復力)の低下につながります。常に睡眠不足を感じていると、物忘れが増えたり、些細なことでイライラしやすくなったりすることがあります。 睡眠不足が社会に与える影響 経済損失日本は睡眠不足大国であり、その経済損失は年間約15兆円にも上ると試算されています。睡眠不足による生産性の低下や事故のリスクの増加は、個人だけでなく社会全体に大きな影響を与えます。 睡眠負債毎日のわずかな睡眠不足が借金のように積み重なることを「睡眠負債」と呼びます。これは生活習慣病やうつ病など、心身の不調として現れることがあり、自覚がないままに蓄積されていくことがあります。 対策と現状 適切な睡眠時間の確保適切な睡眠時間は人によって異なりますが、一般的には7時間以上の睡眠が推奨されています。特に、成長期にある青少年は8〜10時間の睡眠が理想とされています。 日本の睡眠状況厚生労働省の調査によると、日本人の約4割が6時間未満の睡眠しか取れておらず、5人に1人が睡眠の質に不満を感じています。年代別の傾向として、20代では就寝前のスマートフォン利用、30〜40代男性では仕事、30代女性では育児が睡眠不足の原因となることが多いです。さらに国際比較では、日本人の平均睡眠時間は主要先進国の中でも最も短い水準にあり、デジタル機器の利用や長時間労働の文化が影響していると考えられます。...